スーザン・ボイラの悲劇

 人間は夢や目標を抱えていて、それを実現しようと追いかけ、努力し続けることで最終的に適えるのが、人生の送り方そのものであろう。スコットランド出身のスーザン・ボイラにも普通の人と変わらぬような素敵な夢があった。それは歌手になることだ。48歳にしては、不可能に近い、寝言を言っているようにも捉えられるかもしれないが、彼女の昔からの夢だった。恵まれない家庭で生まれ育った背景は、彼女にとって夢を適えるのに一番の障碍になっていた。91歳にもなる母親の介護をしながら僅かな合間をぬって、身の回りの道具をマイクとして使い、歌の練習をする日々だった彼女に、時代はチャンスをもたらしてくれた。イギリスの民放が主催するオーディションが彼女に出場権を与えたのだ。
 オーディションに出場したスーザンは「夢は破れて」という曲を熱唱した。ぽっちゃり系なお婆ちゃんがステージに上がった時、審査員や観客の中には笑いを飛ばす者までいた。だが、彼女の館内を響かせる美声は見る者全体を呆気させた。彼女の歌声で一変した観客は最終的に総立ちし、彼女の応援に回った。歌ったときの様子をYOUTUBEにアップロードしたところ、アクセス者数が殺到し、たちまち一万以上をマークした。彼女は軽々と準決勝を突破した。そんな彼女が気が付けば、もう有名人になっていた。帰ったら、自宅前を取材陣に立ち尽くされていた。いつも身の回りをうろちょろするマスコミ関係者に彼女は時たま苛立ちを感じ、思わず顔に感情を出してしまうような素振りが彼女をメディア側に悪者扱いさせるようになった。決勝戦では、それが落とし穴になり、2位で優勝を見逃す結果となった。「こんな番組は大嫌い」と言い、スカートの裾を巻き上げるなどの奇行を取り、会場を後にした彼女だが、その後ショック症状を起こし、救急車で運ばれ、入院生活を余儀なくされた。一生かけて追い続けた夢によって、破滅される身となった彼女は「田舎者」の代表で、マスコミに翻弄された犠牲者だ。善良な市民はいつも弱い立場に回される。
 
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